香港で現地採用として働くことになった際、毎月の給与から何がどれくらい天引きされるのかは非常に気になるポイントです。日本で働いていると、毎月の給与明細を見て「えっ、こんなに引かれるの?」と驚くことも多いですが、香港の給与事情は日本とは全く異なります。
結論から言うと、香港は日本と比べて給与から天引きされる項目が非常に少ないです。今回は、香港現地採用における給与天引きの基本について、私の視点から分かりやすく解説します。
日本と香港の給与天引きの大きな違い
日本では、会社員であれば毎月の給与から実に多くの項目が自動的に天引きされています。
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
- 所得税
- 住民税
これらが毎月引かれるため、額面給与と手取り額の差が大きくなってしまいます。一方、香港の一般的な会社員の場合、基本的に給与から天引きされるのは「MPFだけ」という会社が非常に多いです。日本のような手厚い(そして負担の重い)社会保険制度がないため、額面と手取りの差がほとんどないのが香港の特徴です。
香港の給与天引き項目一覧
香港の一般的な会社員における給与天引きの項目とその状況、備考は以下の通りです。
| 項目 | 天引きの有無 | 備考 |
|---|---|---|
| MPF(Mandatory Provident Fund) | あり | 法律で義務。給与の5%(上限HKD1,500/月) |
| ORSO(Occupational Retirement Schemes Ordinance) | あり | MPFの代替・補完制度。会社が導入している場合のみ、内容も会社による。 |
| 医療保険 | 一部あり | 会社によっては給与控除あり。 |
| 団体生命保険 | 一部あり | 会社によっては給与控除あり。 |
| 社員食堂・寮費 | 一部あり | 利用者のみ。 |
| 組合費 | 一部あり | 加入者のみ。 |
香港の所得税は天引きされない?
日本と大きく違う点として、「所得税」の存在が挙げられます。香港には給与からの源泉徴収制度(毎月の給与から税金を先取りして天引きする仕組み)はありません。
そのため、例えば月給が33,000HKDの場合の計算は以下のようになります。
- 給与:33,000HKD
- MPF:▲1,500HKD
- 差引支給額(手取り):31,500HKD
この31,500HKDがそのまま会社から銀行口座に振り込まれます。会社が医療保険や団体保険などを給与控除する制度を採用している場合はその分が追加されることもありますが、そうでなければ引かれるのは本当にMPFだけです。
では所得税はどうするのかというと、後から自分で税務申告(BIR60)を行い、税務局(IRD)から送られてくる納税通知書に従って、自分で直接税金を支払うことになります。毎月の手取りが多いからといってすべて使ってしまうと、後からの税金支払いで困ることになるので注意が必要です。
強制公積金(MPF)の具体的な仕組み
香港で働く上で避けて通れないのがMPF(Mandatory Provident Fund、強制公積金)です。これは法律で加入が義務付けられている一種の年金制度です。
月給33,000HKDのケースを例に、具体的な毎月の積立構造を見てみましょう。MPFの天引き割合は給与の5%ですが、月額の上限が1,500HKDと定められています。そのため、月給が30,000HKD以上の方は一律1,500HKDの天引きとなります。
- 本人負担(給与天引き):1,500HKD
- 会社負担:1,500HKD
- 毎月の合計積立額:3,000HKD
このように、自分が給与から天引きされた額と同額を会社も負担してくれており、毎月合計3,000HKDが自分のMPFアカウントに積み立てられていきます。
【コラム】「香港で20年働くと年金がもらえる」という噂の真実
日本人コミュニティや現地で働いている方から昔からよく聞く噂に、「香港で20年働けば年金がもらえるようになる」というものがあります。しかし、結論から言うとこれは完全な誤解・都市伝説です。
日本の公的年金のように「最低受給資格期間(○年納付)」といった年数縛りはMPFには一切存在しません。勤続年数に関わらず、自分が積み立てた元本と運用益がそのまま自分の口座資産になります。
なぜこのような噂が出回ったのかというと、以下の歴史的・制度的な背景が複雑に混ざり合って伝わったためと考えられます。
- かつての日本の公的年金制度(25年縛り)との混同:日本で受給資格期間(旧25年、現10年)が必要だったため、「香港にも似たような勤続年数の条件があるのだろう」と思い込まれた。
- 旧香港政府公務員年金(20年勤続):2000年のMPF発足前に採用されていた旧制度の公務員年金には「20年以上の勤務」という受給基準が存在していたため、これが一般民間企業の制度と誤解された。
- 福祉手当(綜援など)の居住要件議論:公的扶助の受給条件として「香港に20年以上居住していること」を条件化すべきという議論が過去に起きたため、その「20年」という数字だけが一人歩きした。
実際のMPFは勤続年数に関係なく、原則65歳到達時、または「香港を永久に離れる(本国へ帰国する)」際に手続きを行うことで、自分が積み立てた分を一括で引き出す(解約する)ことが可能です。年数制限を気にする必要はありませんので安心してください。
よくある誤解:TVC(税控除対象任意拠出金)は天引きか?
MPFに関連してよく話題に上るのがTVC(Tax Deductible Voluntary Contributions、税控除対象任意拠出金)です。これは通常のMPFに上乗せして任意で積み立てる制度で、税控除の対象になるため節税対策として非常に人気があります。
しかし、このTVCは給与天引きではありません。ここを誤解されている方がとても多いです。TVCは会社の給与計算とは完全に切り離されており、通常は以下のような方法で自分自身で直接支払います。
- 指定した銀行口座から自動引落
- クレジットカードでの決済
- 個別での振込
そのため、会社に頼んで給与から引いてもらうということはできません。自分で手続きを行って積み立てる必要があります。
効率的な資産形成の3本柱
香港の非常に低い税率と、給与天引きがほぼMPFのみという手取りの多さを活かせば、効率よく老後の資産形成を進めることができます。特に50歳から香港で資産形成を始めるような場合、以下のような組み合わせを並行して進めていくのが効率的でおすすめです。
- MPF(必須):法律で義務付けられている基本の積立。
- TVC(任意上乗せ):年間60,000HKDの満額まで活用することで、香港の所得税を抑えながら老後資金を増やせます。
- 証券口座(BOOM証券など)での投資:香港ではキャピタルゲイン(売却益)や配当金への課税がないため、ETFやインデックス投資を行う環境として非常に恵まれています。
この3つの柱をうまく組み合わせることで、香港にいるメリットを最大限に享受しながら、確実な資産を積み上げることが可能になります。
まとめ:毎月の給与明細のイメージ
あらためて、香港現地採用で月給33,000HKDの場合の、毎月の給与明細の基本形を整理しておきます。
- 基本給:33,000HKD
- MPF:▲1,500HKD
- 差引支給額:31,500HKD
日本のように多種多様な項目が引かれない分、手元に残るお金は多く見えますが、税金の後払いや自分での資産運用の必要性をしっかりと頭に入れて、計画的にお金を管理していくことが大切です。
香港での就労・生活・旅行の関連情報

香港での給料天引きやMPF(強制公積金)の詳しい仕組みはもちろん、現地での税務申告や生活事情、絶品グルメやおすすめ観光スポットなどは、以下の特設ガイドでまとめて解説しています。現地採用・ビジネス・旅行の計画にぜひお役立てください!



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