みなさん今日は、消費者契約法と特定商取引法の関係についてお話しさせていただこうと思います。
近年、様々な消費者問題が発生し、国としても消費者保護の観点から、事業者の一方的な勧誘や情弱に付け込んだ契約、不当な契約条項を結ぶなどの行為に規制をかけています。
先日もフィリピン留学で問題のあった新型コロナウイルス感染症に伴う学校休校の際の返金問題も、消費者と事業者であるフィリピン留学語学学校や留学エージェント間との問題です。
それらトラブルを規制するために施行されている法律が「消費者保護法」と「特定商取引法」です。
消費者契約法とは
「消費者契約法」の条文を見てみると第1条に目的が書かれています。かいつまんで読むと「消費者と事業者との間の情報の質、量、交渉力に格差がある」ため
- 事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合に
- 契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができ
- 事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とする
としています。そして、「消費者契約法」は消費者と事業者の間のすべての取引(労働契約は除く。第48条)に適用されます。
もし万が一、上記の目的が達成されない場合は、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができると規定されています。そして、この差止請求の権限は消費者庁長官が持つとされています(第48条の2)。
「消費者契約法」は、消費者保護の観点から一定の不当条項の無効と、一定の場合における消費者の契約取消権を定めたもので、消費者と事業者間の民事上の権利関係について定めた法律です。
特定商取引法とは
「特定商取引法」の第1条には目的が書かれています。この法律は、
- 特定商取引(特定継続的役務提供に係る取引等)を公正にし
- 購入者の損害の防止を図ることにより、購入者の利益を保護し
- 商品の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし
- 国民経済の健全な発展に寄与する
ことを目的とするとあります。
「特定商取引法」は、消費者保護の観点と、特殊な取引方法を扱う業者を規制する「業法」の2つの側面があります。悪質な業者を取り締まるために、クーリングオフや取消権などが加わり、同時に消費者保護が手厚くなってきています。ただ、それでも規制をかいくぐって、新手の悪質業者が次々と出てきていることは事実です。
また、業法という観点からも、「特定商取引法」に定められている禁止行為を行うと行政処分や刑事罰の対象となります。第74条には、違反行為を行った従業員又は法人に最大で3億円の罰金刑を科すことを定めています。
特定商取引法には専用のサイトもあり、執行事例や問い合わせもできるようになっています。
消費者契約法と特定商取引法の関係
2つの法律が適用される場面というのは主に契約解除の場面ですが、どの法律を適用させるかの順番は特にありません。その場面で最も有利な法律を適用すれば良いでしょう。
ただ、消費者契約法の対象が消費者が行う労働契約を除くすべての契約に対して、特定商取引法の対象は、条文に書かれている具体的な事業者と消費者との取引が対象になるので、法律を適用させようとする契約が各法律に当てはまるかは事前に確認しましょう。
消費者契約法と特定商取引法の解除・無効・取り消し
もし、トラブルのある契約が消費者と特定商取引業者との間の契約である場合、下記のとおりのアクションが可能です。
特定商取引法による解除(クーリングオフ)
特定商取引法における訪問販売契約に関して、契約書面の交付を受けた日から起算して通常の場合8日以内にクーリングオフが可能です。契約書に特定商取引法の要求する必要的記載事項が全部書かれていなければ、期間に関係なくクーリングオフできます。
錯誤無効の要件
- 意思表示に錯誤があること
- 錯誤が法律行為の要素に関するものであること
特定商取引法による取り消しの要件
- 契約が特定商取引法の対象であること
- 契約締結の勧誘に際し、重要事項についての不実告知があったこと
- 表意者がその内容を事実であると誤認したこと
- 表意者が誤認に基づいて取消の意思表示したこと
消費者契約法による取り消しの要件
- 契約が消費者契約であること
- 契約締結の勧誘に際し、重要事項についての不実告知があったこと
- 表意者がその内容を事実であると誤認したこと
- 表意者が誤認に基づいて取消の意思表示したこと
その他詳細は専門家に相談しましょう。
コメント