フィリピン

フィリピンで20年ぶりとなる包括的税制改革第1弾(トレイン法)について

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フィリピンにおいて20年ぶりとなる税制改革法(TRAIN法:Tax Reform for Acceleration and Inclusion)の第1弾が2017年12月19日にドゥテルテ大統領に署名され、2018年1月に発効しました。

当該税制改革は、ドゥテルテ大統領が掲げる中間所得者層の拡充、貧困低減、インフラ整備の実施に向けた財政確保のための重要施策です。

 

一方で、この税制改革法第1弾(TRAIN法)は、「硝子の剣」とも言われていて、中流・下流階級に属する何百万人もの個人納税者に、所得税減税という恩恵がもたらされる一方で、石油、たばこ、甘味飲料、自動車等の特定商品に課される税金が引き上げられることに由来します。

 

税制改革は5段階に分けて計画されていて、第1弾は、個人所得税の減税、一部物品税の引き上げおよび新設等が含まれています。また、法人税率の引き下げや税務優遇制度の見直しを含む、第2弾法案もすでに国会に提出されており、今後の動向が注目されます。

 

税制改革第1弾:RA10963(共和国法第10963号)

税制改革第1弾の内容に関しては下記のようなものがあげられます。

  • 個人所得税関連の見直し
  • 株式の売却に対するキャピタル・ゲイン税の増税
  • 物品税の変更および新設
  • VAT(付加価値税)課税対象取引の拡大
  • 寄付金課税、相続税、贈与税
  • 印紙税の増税
  • 非必需サービスに課される新たな税金
  • 甘味料に課される新たな税金 

原本ダウンロード:https://www.dof.gov.ph/?wpdmdl=20619

条文コピペ可能:PHILIPPINE LAWS, STATUTES & CODES – CHAN ROBLES & ASSOCIATES LAW FIRM

 

個人所得税関連の見直し

個人所得税率

2018年1月1日以降~2022年12月31日まで

年間課税所得の範囲税率
超(単位:ペソ)以下(単位:ペソ)
250,000無税
250,000400,000250,000ペソを超える金額について20%
400,000800,00030,000ペソ+400,000ペソを超える金額について25%
800,0002,000,000130,000ペソ+800,000ペソを超える金額について30%
2,000,0008,000,000490,000ペソ+2,000,000ペソを超える金額について32%
8,000,0002,410,000ペソ+8,000,000ペソを超える金額について35%

 

2023年1月1日以降

年間課税所得の範囲税率
超(ペソ)以下(ペソ)
250,000無税
250,000400,000250,000ペソを超える金額について15%
400,000800,00030,000ペソ+400,000ペソを超える金額について20%
800,0002,000,000130,000ペソ+800,000ペソを超える金額について25%
2,000,0008,000,000490,000ペソ+2,000,000ペソを超える金額について30%
8,000,0002,410,000ペソ+8,000,000ペソを超える金額について35%

 

その他の個人所得税関連

 旧法新法
非課税賞与枠年間82,000ペソ年間90,000ペソ
基礎控除年間50,000ペソ廃止
扶養控除1名あたり25,000ペソ、最大4名まで廃止
その他の控除20,000ペソの相続廃止
拡大外国通貨預金制度の預託銀行から受け取る利息収入7.5%の分離課税15%の分離課税
非上場企業の株式売却によるキャピタルゲイン課税100,000PHPまで5%
100,000PHP超える金額は10%
15%

 

フリンジベネフィット税

フリンジベネフィット税は、管理職の役職に与えられる付加給付に対する税金です。

旧法

フリンジベネフィット税は、管理職の役職に与えられる付加給付に対する税金です。旧法では付加給付の金銭価額を68%(100%△32%)で割り戻した額に旧法の個人所得税の最高税率である32%を乗じることで計算。

新法

個人所得税率の変更に応じて、65%(100%△35%)で割り戻した額に新法の個人所得税の最高税率である35%を乗じた額が税額となります。

関連記事:フィリピンの付加給付税(フリンジベネフィット税)

 

その他

VAT(付加価値税)課税対象取引の拡大

フィリピンにおける付加価値税(Value Added Tax: VAT)とBIR Form 2550及びTRAIN法

 

寄付金課税、相続税、贈与税

旧税法では累進課税あるいは30%の固定レートであったものが、新法では25万ペソを超える場合に一律6%に置き換えられ、減税が図られました。

また、税法第100条には、通常の事業活動の過程などで、寄付の意図がない場合は、当該取引は寄付金課税の対象とならないことが明確化されました。

納税者にとっては、通常の取引のなかで、市場価格より低い値段で取引したとしても寄付金の意図がないことを立証すれば寄付金課税の対象外となる機会が与えられるということです。

関連記事:フィリピンの寄付金課税・譲渡税

出典:2018/7/12 フィリピン税制改正の影響と今後の課題 – KPMG

 

参考:

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