台中市街地から少し南へ下った歴史の街・霧峰。台湾五大家族の筆頭として知られる名門「霧峰林家」の邸宅群の中でも、ひときわ異彩を放つ華麗な空間が存在します。
それが台湾に現存する唯一の福州式劇場建築「大花廳(Dàhuā Tīng / ダーファーティン)」です。かつて林家が私設の軍隊や要人を歓待し、豪壮な宴や伝統劇を催すために築いた私設舞台で、釘を一切使わずに組み上げられた八角形の組子天井(藻井)や、咲き誇る蓮の花の木彫りはまさに息をのむ美しさ。
さらに日本のファンにとっては、歌手の安室奈美恵さんと台湾の歌姫ジョリン・ツァイ(蔡依林)さんがコラボ楽曲『I’m Not Yours』のミュージックビデオを撮影した伝説のロケ地・聖地としても名高い場所。
この記事では、宮保第の回廊を抜けた先にある大花廳の壮麗な舞台構造、安室奈美恵さんゆかりの展示、観覧客席の調度品から路地裏の台所遺構まで、現地で実際に歩いた時系列に沿って写真たっぷりでレポートします!
宮保第の回廊を抜け、大花廳の入口へ

格式高い官宅建築である「宮保第」の見学を終え、長く続く木造の回廊を進みます。外光が柔らかく差し込む板張りの廊下を歩いていると、徐々に建物の雰囲気が変わり、劇場の気配が近づいてくるのが分かります。

回廊を抜けると、いよいよ大花廳への入口に到着します。宮保第の厳格な官庁的佇まいとは異なり、どこか非日常のエンターテインメント空間へと誘うような、重厚でありながら華やいだ門構えが迎えてくれます。

入口の軒先には、艶やかな深紅の提灯がずらりと吊り下げられていました。黒く艶めく木造の梁と赤い提灯の対比が非常に美しく、夜の宴席で提灯に明かりが灯っていた当時の華やかな光景が目に浮かぶよう。
台湾唯一の福州式劇場建築「大花廳」の圧巻の意匠
提灯の下をくぐり、中庭の広場へ抜けると、目の前に広がるのが大花廳のメインステージ(戯台)。

正面から見上げる舞台の迫力は圧倒的。大花廳は清朝末期の光緒年間に着工され、数年もの歳月をかけて完成した林家のプライベート劇場です。台湾広しといえど、この福州式と呼ばれる伝統的な木造舞台が残っているのはここ霧峰林家だけ。

木組みの美しさと重厚な柱が支える舞台スペース。

反り返る屋根の曲線と、緻密に彫り込まれた木造彫刻。
舞台の天井を見上げると、釘を使わずに木材を幾重にも組み上げた「八角藻井」が施されています。その中央には見事な蓮の花が彫り込まれており、これが「大花廳」という名称の由来にもなっています。この特殊なドーム天井構造は、単なる美観だけでなく、舞台上で演じる役者の声や楽器の音を反響させる音響効果の役割も果たしていました。
貴賓気分で舞台を見渡せる客席スペース

舞台の正面や2階部分には、かつて林家の一族や招かれた要人たちが芝居を鑑賞した客席がそのまま保存されています。
部屋の中には重厚な紅木家具や螺鈿細工の椅子、繊細な透かし彫りの衝立が整然と並び、まさに清朝貴族の社交場そのもの。ここに腰掛けて舞台を眺めると、まるでタイムスリップしてVIP待遇で観劇しているかのような錯覚を覚えます。
安室奈美恵さんのMV撮影地!ファン必見の聖地巡礼

大花廳は歴史建築ファンだけでなく、音楽ファンの聖地としても広く知られています。2014年に歌手の安室奈美恵さんが、台湾のトップ歌姫ジョリン・ツァイ(蔡依林)さんと共演した楽曲『I’m Not Yours』のミュージックビデオのロケ地がまさにここ大花廳。
会場内には当時の撮影風景や現地台湾メディアの報道記事をまとめたニュースパネルが展示されています。妖艶な狐の妖怪に扮した二人が豪華絢爛な衣装で舞い踊った舞台を目の前にすると、ファンならずとも胸が熱くなること間違いなしです。
大花廳の周辺散策:名門の歴史と当時の生活空間
舞台の見学を終えた後も、大花廳の周囲には見逃せない見どころが点在しています。
林家の歩みを物語る家系図

展示室の壁面には、霧峰林家の壮大な家系図が掲示されています。清代の軍功から日本統治下の文化運動、そして戦後の近代化に至るまで、台湾の歴史の転換点には常に林家の人々が深く関わってきました。家系図を辿ることで、この広大な邸宅が築かれた背景をより立体的に理解できます。
ノスタルジックな赤レンガの小道

建物の間を縫うように延びる、ヘリンボーン(人字形)に敷き詰められた赤レンガの床と壁。幾重もの年月を経て味わいを増したレンガの質感は、ポートレートや記念撮影にぴったりの陰影を作り出してくれます。
独特な丸い通用口(月門)

敷地の奥へと進むと現れるのが、中国古典園林でおなじみの丸い通用口(月門)。円形の開口部は風水的な意味合いだけでなく、額縁のように奥の景色を切り取る視覚効果を持っています。ただし開口部がやや低めで丸いため、背の高い方は頭上と足元の高い敷居に気をつけながらくぐりましょう。
再現された昔の台所と食卓

大花廳の裏手区画には、かつて宴席の料理を切り盛りしていた当時の台所(厨房)と素朴な食卓スペースが再現されています。大きな中華鍋がはめ込まれたレンガのかまどや竹製のざる、調味料壺など、豪壮な劇場の舞台裏で働いていた使用人たちのリアルな息遣いが感じられる興味深い展示です。
大花廳見学のポイント・撮影の注意点
| フラッシュ撮影の禁止 | 歴史ある木造彫刻や金箔・顔料の劣化を防ぐため、ストロボ・フラッシュを使用した撮影は厳禁です。スマホやカメラのオート発光をあらかじめオフにしておきましょう。 |
|---|---|
| 広角レンズの活用 | 中庭から舞台全体や八角藻井(天井)を一枚に収めるには、スマホの超広角モード(0.5倍など)を使うのがベストです。下から見上げるアングルで撮ると屋根の反りと天井細工がダイナミックに写ります。 |
| 足元の高い敷居 | 部屋や通路の境目には数十センチの木製敷居が張り巡らされています。また丸い通用口など頭上が低い箇所もあるため、移動時は足元・頭上への配慮を怠らないようにしましょう。 |
まとめ:台湾最高峰の木造美と華やかな歴史ロマンに浸る
霧峰林家宮保第園区の中でも、ひときわ華麗な輝きを放つ「大花廳」。
釘を使わずに組み上げられた八角形の天井細工、深紅の提灯、安室奈美恵さんのMV撮影の熱気、そして舞台裏の生活の痕跡まで、一歩足を踏み入れるだけで圧倒される見どころが凝縮されています。霧峰を訪れた際は、ぜひこの台湾唯一の福州式劇場の空間美をじっくりと堪能してみてください!
あわせて読みたい:霧峰林家・宮保第と霧峰観光ガイド

大花廳の壮麗な舞台美を満喫した後は、隣接する清代最高格式の官宅「宮保第」の全容や、チケット購入の手順、名物アイス「台湾日本冰」、そして霧峰エリア全体のモデルコースをあわせてチェックしてみませんか?
当ブログ「アジスタ」では、霧峰林家宮保第園区の全体像をはじめ、レトロな光復新村や921地震教育園區、台中市内からのバス・YouBikeアクセス術まで、現地取材に基づいた実用的な攻略情報を網羅しています。霧峰観光の計画作りにぜひお役立てください!
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