ホーチミン

言葉のわからないベトナム結婚式で、私は一晩中「生け簀」の魚を眺めていた

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こんにちは、TKJです。

2012年、私はベトナム・ホーチミンにいました。知人に誘われるがまま、現地の方の結婚披露宴に参加することになったのですが、これが私の人生の中でも指折りの「シュールな体験」となったのです。

言葉が全くわからない中、数時間に及ぶ宴。私が最終的に行き着いたのは、新郎新婦の元でも、賑やかなテーブルでもなく、会場の隅にある「水槽」の前でした。

 

 

1. 爆音と風船に包まれたガーデン披露宴

風船装飾と木造の屋根が見えるガーデンレストラン風の披露宴会場の全景

会場は夜の風が吹き抜ける、開放的なガーデンレストラン風の屋外スペース。いたるところに風船が飾られ、ステージには新郎新婦の名前と日付が誇らしげに掲げられていました。

 

風船で飾られた結婚披露宴のステージ看板(名前と日付入り)

夜の屋外会場で新郎新婦とゲストが並んで記念撮影している様子

テーブルにはシャンパンボトルや巨大なウェディングケーキ。ゲストたちは次々とステージに上がり、新郎新婦と記念撮影を繰り返します。ここまでは、どこにでもある幸せな結婚式の風景でした。しかし、ここからが「ベトナム流」の真髄です。

 

2. 止まらないカラオケ、通じない言葉

披露宴会場でマイクを持って歌う女性と、着席するゲストの様子

ベトナムの披露宴に欠かせないもの。それは、プロ顔負け(あるいはそれ以上)の音量で繰り広げられる「ゲストによるカラオケ大会」です。

 

白いスーツ姿の男性が披露宴会場で歌っている様子

披露宴の席でゲストが飲み物を配って回っている様子(夜の屋外会場)

白いスーツでビシッと決めた男性や、華やかなドレスの女性が次々と熱唱。周りでは「モッ・ハイ・バー・ヨー!(1, 2, 3, 乾杯!)」の掛け声とともにビールが配られ、会場のボルテージは上がり続けます。

しかし、言葉が1ミリもわからない私にとって、その熱狂はどこか遠い世界の出来事のようでした。笑顔で頷くのにも疲れ、私はふらりと席を立ちました。

 

3. 私を救ってくれたのは「緑に光る魚たち」だった

喧騒から逃れた私が辿り着いたのは、レストランの一角にある生け簀(いけす)コーナーでした。なぜか怪しげな緑色の照明に照らされたその場所は、私にとって唯一の安らぎの場となったのです。

 

活け蟹(GHẸ)の水槽(緑ライトで照らされた店内の生け簀)

「TÔM CÀNG」表示の水槽(大きめのエビの生け簀・緑ライト)

言葉はわからなくても、プレートに書かれたベトナム語を読み、魚の姿を観察することはできました。その夜、私が熱心に観察した「友人」たちを紹介しましょう。

 

表示名 特徴
GHẸ 緑の光の中で蠢く活け蟹。ハサミを縛られ、出番を待っている。
CÁ MAO ẾCH アンコウかナマズのような、何とも言えない愛嬌のある顔。
CÁ MÚ 高級魚ハタ。じっとこちらを見つめ返してくる。
TÔM CÀNG 立派なハサミを持った大エビ。一番美味しそうだった。
CÁ CHÌNH ニョロニョロと動くウナギ。見ているだけで飽きない。

 

爆音のカラオケをバックに、緑色の水槽を見つめる日本人。 周りから見れば「相当な魚好き」に見えたことでしょう。しかし、当時の私にとって、彼らだけが「静かに向き合える相手」だったのです。

 

4. 宴のあとの静寂

結婚式パーティー後の店内風景(テーブルの食器が残る会場)

数時間に及ぶパーティーが終わり、ゲストたちが潮が引くように帰っていくと、会場には食べ散らかされた食器と、静まり返った装飾だけが残されていました。あれほど賑やかだったステージも、今はただの風船の塊です。

 

鳥のオブジェと大きな卵のオブジェ(夜の屋外レストラン装飾)

出口付近に飾られた、大きな鳥と卵のオブジェ。 この夜、新郎新婦が何を誓い、人々が何を歌っていたのか、今となっては一つも思い出せません。ただ、あの緑色に光る水槽の魚たちと過ごした数時間の記憶だけが、今も鮮明に私の心に残っています。

 

ベトナムの結婚式。それは、孤独と喧騒が同居する、とても不思議でエネルギッシュな体験でした。

 

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