海外留学やワーキングホリデーで現地の語学学校とのトラブルになった際の法的問題

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海外語学学校とのサービス提供取引に対して適用される法律とは

準拠法の重要性

海外語学学校との間で、受講契約を行うにあたっては、「この取引にはどこの国のどのような法律が適用されるのか」を検討することが重要です。

日本人同士が日本国内で物品の取引を完結させるような場合には、ほとんどは日本の民法が適用されるため、特段トラブルや問題が発生していなければ、日常的な取引の慣行にしたがって注文書や取引基本契約書を作成すれば十分と考えて処理されているでしょうし、あるいは何ら書面を取り交わさない企業も多く存在します。

しかし、海外の大学や語学学校に入学する場合は、必ずしも日本の民法が適用されるわけではありません。きちんと事前対策をしておかなければ、後になって国内における取引慣行と異なるような法律が適用されて、不測の不利益を被るという事態が有り得ることになります。

ある国際的な取引に対して適用される法律のことを「準拠法」といいますが、海外の語学学校や大学に直接申し込む場合は、この準拠法を気にかけておくことが大事です。

準拠法の決まり方と注意すべき場合

(当事者による準拠法の選択)

第七条 法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。

法の適用に関する通則法 第7条

日本国内においては、準拠法は「法の適用に関する通則法」によって決定されることになります。まず押さえておくべきは、同法7条が「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」としていることです。

つまり、契約の当事者が「本契約には、日本法が適用される。」と合意しておけば,基本的にその契約には日本民法が適用されることになるのです。

しかし、そもそも契約締結に至らず、交渉中にトラブルになってしまった場合などは、準拠法の合意がされていないことがほとんどです。そのような場合には、どのような法律が適用されるのか、やはり問題となります。

 

当事者による準拠法の選択がない場合

第八条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。

法の適用に関する通則法 第8条

上記は、「法の適用に関する通則法」の第8条。契約当事者が「本契約には,日本法が適用される。」と合意していない場合における準拠法の決定方法です。「当該法律行為の当時」とは語学学校や大学の構内での授業の提供を表し、法律行為の成立および効力は、その語学学校や大学がある地域の法律によると定められています。

つまり、留学申込書や契約書に準拠法の記載がなければ、その学校のある国の法律に従わなければいけないということです。アメリカの大学に行っているのであれば、アメリカの法律、フィリピンの語学学校に行っているのであればフィリピンの法律に基づいて法律行為を行わなければいけないということなのです。

 

2 前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

法の適用に関する通則法 第8条

「法の適用に関する通則法」の第8条2項は、さらに上のように述べています。前述の第1項ににていますが、これを語学学校や大学に当てはめるとやはり、その校舎のある国の法律が適用されます。

 

準拠法が現地の法律だった場合の対処

現地の法律が適用されるということは、現地語又は英語で書かれた条文や文献を読まねばならず、かなりの労力を要します。現地にいる日系の法律事務所に依頼するのがベストでしょう。

 

また、法務省が定期的に発行している「日本企業及び邦人を法的側面から支援する方策等を検討するための調査研究」のような、日本語でかかれた情報を予め読んでおくと良いです。

日本企業及び邦人を法的側面から支援する方策等を検討するための調査研究

 

法の適用に関する通則法の例外

上記は「法の適用に関する通則法」の原則規定でしたが、実はこの法律には例外があります。

 

(消費者契約の特例)

第十一条 消費者と事業者との間で締結される契約の成立及び効力について第七条又は第九条の規定による選択又は変更により適用すべき法が消費者の常居所地法以外の法である場合であっても、消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、当該消費者契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

法の適用に関する通則法 第11条(一部省略)

これはまさに海外留学を申し込んだ消費者と現地の学校やエージェント間の契約に適用できる例外規定。日本人が日本の法律を適用したいと事業者に伝えたら、事業者はそれに従わなければならないという規定。

まさに日本の「消費者契約法」を適用する場面です。

消費者契約法

 

海外語学学校との交渉のもう一つの方法

上記は、留学生個人が現地の大学や語学学校と契約した際のケースですが、もし現地の学校を日本人が運営していた場合は、どうなるのでしょうか?真正面から行くと、法律の規定どおり、現地の法律に基づいて、学校という法人に対して訴訟なり差し押さえなりする必要があり、法律の専門家でない、ましては英語が堪能でない留学生にとっては、高いハードルとなります。

そういった場合は、実質的な経営者であるその日本人に対して、日本の法律を適用させるしか道はありません。

 

刑法第3条(国民の国外犯)

第三条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。

十五 第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪

刑法第三条(国民の国外犯)

日本の刑法第3条には、日本国外において、日本国民が犯した罪について、日本の刑法が適用される旨が記載されています。第15項に詐欺や恐喝の記載がありますので、もし留学申込の際に詐欺まがいの説明があったり、恐喝があった場合には、この条項を適用するという方法もあります。

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国外にいる日本人への民法の適用

事務管理及び不当利得

(事務管理及び不当利得)

第十四条 事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法による。

(明らかにより密接な関係がある地がある場合の例外)

第十五条 前条の規定にかかわらず、事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に関連して事務管理が行われ又は不当利得が生じたことその他の事情に照らして、明らかに同条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。

法の適用に関する通則法 第14条及び第15条

法の適用に関する通則法にあるとおり、民法上の事務管理又は不当利得は原則として、「その原因となる事実が発生した地の法による」とありますが、下記一定の要件を満たすことにより、他の地の法によることができます。

  1. その原因となる事実が発生した当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと
  2. 当事者間の契約に関連して事務管理が行われ又は不当利得が生じたこと
  3. その他の事情に照らして、明らかに同条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるとき

 

不法行為

(不法行為)

第十七条 不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。

法の適用に関する通則法 第17条

不法行為も例外規定あり。

 

留学斡旋業者が間に入っている場合

上記は、個人が現地の語学学校や大学と直接やりとりした場合を想定していますが、多くの場合、日本の留学斡旋業者を通じて、ワーキングホリデーや大学留学、語学学校を申し込んでいるかと思います。

日本に事務所を構える留学斡旋業者へ留学を申し込んだ場合は、業者との契約は留学斡旋契約になりますので、日本の法律が適用されることに異論はないでしょう。日本の法律が適用されるのであれば、日本の民法や刑法、旅行業法や消費者契約法等様々な法的アプローチが可能です。

トラブルが起こる前に今一度、自分の契約した契約は、どの国の法律が適用されるのかを渡航する前に予め確認しておくにこしたことはありません。

 

消費者契約法

海外留学サービスを対価とする契約は「特定商取引法」の対象外となるため、無条件に解約できる「クーリング・オフ」制度は適用になりません。しかしながら、消費者契約法9条では高額の解約料の支払い要求にたいしての減額請求が認められ、民法96条1項では不適切な勧誘や事実と異なる説明による契約については契約を取
り消して全額返還を請求できると定められています。

留学・研修・サポート商品の裏側 業界・消費者背景

 

海外動産取引

ちなみに、語学留学などの労働サービスに対して金銭を支払う契約ではなく、日本の企業が海外の企業と物品の売買契約を行う際も、準拠法が問題になります。

基本的に売買契約書に準拠法の記載があるはずですが、当事者の営業所所在地が(ア)異なる締約国にある場合,または、(イ)国際私法(日本でいうところの,上で述べた「法の適用に関する通則法」です)の規則により締約国の法律を適用すべき場合には、「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(ウィーン統一売買法条約,ウィーン売買条約等とも言われます)(CISG)が適用されます。

ウィーン売買条約の概要:日本

 

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