フィリピンでビジネスを展開する際、避けては通れないのが**付加価値税(VAT:Value-Added Tax)です。2018年に施行された税制改革法「TRAIN法(Republic Act No. 10963)」により、多くのルールが変更されました。 今回は、フィリピン内国歳入法(NIRC)の第105条から第115条に基づき、最新のVAT制度について徹底解説します。条文ベースの内容を整理しましたので、実務の参考にしてください。
1. VATの基本概念と納税義務者(SEC. 105)
フィリピンにおけるVATは、商品の販売、物々交換、交換、リース、サービスの提供、および商品の輸入に対して課される間接税です。税金分は購入者や借主に転嫁される仕組みとなっています。
納税義務の定義
- 対象者:貿易または事業の過程で経済活動を行う個人・法人、および商品を輸入する者。
- 「事業の過程」とは:非営利団体や政府機関であっても、商業的・経済的活動を行う場合は含まれます。
- 非居住者:フィリピン国内でサービスを提供する場合、それが不定期であっても事業の過程とみなされます。
2. 商品・財産の販売に対するVAT(SEC. 106)
商品または財産の販売、交換に対して、総販売価格の12%の税率でVATが課されます(旧税率は10%でしたが、現在は12%が標準です)。
課税対象となる「商品・資産」の例
- 通常の取引において販売・リース目的で保有される不動産。
- 特許権、著作権、商標権、意匠、秘密方式などの無形資産の使用権。
- フィリピン国内での産業・商業・科学用機器の使用権。
- 映画、テープ、ディスク、ラジオ、テレビ、衛星放送の放映権。
※総販売価格には物品税(Excise Tax)が含まれますが、VAT自体は含まれません。
ゼロレート(0%)が適用される取引(輸出等)
特定の取引については、VAT登録者は0%の税率を適用でき、支払った入力税(Input Tax)の還付を受けることが可能です。
- 輸出販売:フィリピンから外国への商品の出荷。
- 原材料の販売:輸出企業向けの製造・加工・梱包用原材料(外貨支払いなどの条件あり)。
- BSP(フィリピン中央銀行)への金の売却。
- 国際輸送:国際海上・航空輸送に従事する者への燃料、設備、備品の販売。
※TRAIN法により、VAT還付システムが確立されるまでの間、一部のゼロレート適用には条件が課されています。
3. 商品の輸入に対するVAT(SEC. 107)
商品の輸入については、関税局(BOC)が決定する合計金額(積み上げ費用+関税+物品税+その他費用)に対して、12%のVATが課されます。商品は関税局からリリースされる前に納税が必要です。
4. サービスの販売・資産のリースに対するVAT(SEC. 108)
サービスの提供や資産のリースから得られる**総収入の12%**に相当するVATが課されます。
対象となる主なサービス
- 建設業者、サービス請負業者、証券ブローカー、不動産ブローカー。
- ホテル、レストラン、カフェ、ケータリング業者。
- 電話、電信、放送などのフランチャイズ被付与者。
- 銀行、金融仲介業者、損害保険会社。
- 電力の発電、送電、配電。
サービス取引のゼロレート(0%)対象
- フィリピン国外で消費されるサービスの提供(外貨支払いかつBSP規則に従う場合)。
- 国際輸送専用の船舶・航空機へのサービス提供。
- 再生可能エネルギー(バイオマス、太陽光、風力、地熱等)による電力や燃料の販売。
5. VAT免税取引(SEC. 109):重要リスト
以下の取引はVATを免除されます。免税取引を行う者は、その仕入れにかかったVAT(入力税)を控除することができません。
主な免税対象(抜粋)
- 農水産物:元の状態の農産物、食用水産物、家畜、家禽、種子、苗木、肥料、飼料の販売・輸入。
- 医療・教育:医療、歯科、病院サービス(専門職を除く)、および認定された教育機関の教育サービス。
- 不動産:
- 住宅用の土地売却(150万ペソ以下 ※2026年現在は調整後の金額に注意)。
- 住宅・区画、住居の売却(311万9,500ペソ以下などの条件あり)。
- 住宅用ユニットの月額賃貸料(15,000ペソ以下)。
- 金融・出版:銀行・準銀行等のサービス、固定価格で販売される書籍、新聞、雑誌の出版。
- 高齢者・障害者:高齢者法(RA 9994)および障害者法(RA 10754)に基づく商品・サービスの販売。
- 小規模事業者:年間総売上高が300万ペソ以下の者による取引。
6. 税額控除(SEC. 110-112):Input TaxとOutput Tax
VAT登録者は、売上にかかる「アウトプット税」から、仕入れにかかった「インプット税」を差し引いて納税額を決定します。
インプット税控除の仕組み
- 控除対象:販売用商品の購入、原材料、事業用サプライ、サービスの購入。
- 資本財の償却:100万ペソを超える資本財のインプット税は、かつて5年間で按分償却されていましたが、TRAIN法後の改正により2021年12月31日以降に取得したものは即時控除が可能になっています。
- 超過分:インプット税がアウトプット税を超える場合は、翌四半期へ繰り越すか、特定の条件下で還付申請(SEC. 112)が可能です。
7. コンプライアンス要件(SEC. 113-115)
フィリピンの税務当局(BIR)は、VATの請求書発行と申告に対して非常に厳しい基準を設けています。
請求書と会計(SEC. 113)
- 必須記載事項:「VAT登録者」の旨、納税者識別番号(TIN)、販売額とVAT額の区分(またはVAT込みの表示)。
- 帳簿:補助販売仕訳帳および補助仕入れ仕訳帳の維持が義務付けられています。
申告と納付(SEC. 114)
TRAIN法により申告サイクルが変更されました。2023年1月1日以降、VATの申告・納付は四半期ごと(四半期終了から25日以内)に集約されています。ただし、源泉VAT(政府との取引等)については別途ルールがあります。
事業停止命令(SEC. 115)
以下の違反がある場合、BIRは5日以上の事業停止命令を出す権限を持っています。
- 請求書または領収書の発行不履行。
- VAT申告書の未提出。
- 売上高を30%以上過小評価して申告した場合。
- VAT登録が必要な状況での未登録。
まとめ:2026年のVAT実務での注意点
フィリピンのVAT制度は、単に12%を乗せるだけではなく、ゼロレートや免税の判定、そして厳格な領収書管理が求められます。特にTRAIN法以降、還付申請の期間(90日以内)などが明確化されましたが、手続きの不備はペナルティに直結します。
最新の免税基準額などはフィリピン統計局(PSA)の消費者物価指数(CPI)に基づき3年ごとに調整されるため、実務にあたっては常に最新のBIR通達(Revenue Memorandum Circular等)を確認することが、私からも強くお勧めするポイントです。
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